考察41 法律と宗教
「あのドラマでさ、検察官を目指したいって思う人、結構出てるよね」
「あぁ、いるんじゃない?それくらいインパクトがあったし、やりがいのある仕事って思わせるのに十分な内容だったと俺も思うよ」
「でもさ、被害者と加害者ってほんとなくならないよね。絶対って言って良いくらいに」
「えらく広い範囲の問題提起だね。まぁ、なくならないんじゃないかなと俺も思う。人間だからね」
「他の動物だったら、なくなるっていうこと?」
「ていうか他の動物に被害者も加害者もないと思うけど。それくらい自然界って損得がない世界だと思うなぁ」
「自然界って。ここはそうじゃないの?」
「ありていにいうとね。俺たちが暮らしてるのは自然界も含めた人間界って言ってもいいのでは?」
「ふーん、よくわからないけど。でも損得がないから、被害者も加害者もないっていうのも抽象的だね」
「抽象的だよ。裁くのが人間なんだから。完全な存在だったら、もっと具体的だろうし、そうなっても被害者が被害者じゃなくなるはずだ。
事後にはなると思うけど」
「ねぇ、宗教との違いはなんだと思う?」
「え?宗教?そうだなぁ、法律って道徳とは違うと思うんだ。間違ったことをしても、心を改めれば、
その後報われるっていうのが一般的な宗教の教えだと思うんだけど、法律は、誤りを正す、わけじゃなく、
誤りを見極めて、天秤にかけるって感じかな。更正の場じゃないってことが一番の違いじゃない?」
「そうかぁ。でも、未成年者の場合はどう?」
「うん、多分今後そこが問題の争点になると思うよ」
「問題って・・・、誤りを見極めるのが法律なのに、まだ問題があるの?」
「その法律を作ったのは人間だよ?」
考察40 ピストルとチャカとはじき
「ミステリとか読んでるとさ、やっぱり人が死ぬんだよね」
「え?まぁ、ミステリってそういうものじゃない?事件について解決する物語が多いと思うけど」
「殺されると、やっぱり事件性が高いから、そういう風にもっていくのかな?作者は」
「読者の事を考えると、インパクトが強い方がいいだろうから、そうなんじゃない?
むしろ人が死なないミステリってあんまり読んだ事がないかも。しかも一人じゃなくて複数死ぬよね」
「殺人事件よりも連続殺人事件のほうが規模が大きいからかな。作家さんってある意味恐怖だよね」
「創作ってそう言うものでしょ。そんなこと言ったら、漫画家も映画監督もドラマの監督も、あと絵本作家だって、
そういうことをしてる人が大半だと思うけど」
「うーん、そういうことを擬似的にでも人が望んでるってことなのかな」
「君はそういうの読んだ事ない?」
「ある。あぁ、そういうことなのか。でもなんでなんだろう」
「本能的なものじゃない?この前も話したことかもしれないけど、人って知らないことに恐怖する動物だから。
死後って基本的に見てきた人はいないと思うんだけど、やっぱりそこはどんなものなのかって知りたいっていう欲求があると思うんだよね。
想像でもいいから、見てみたいって考えるのは普通のことだよ。作家さんはある意味、その想像力が高い人種だろうから、それを明確に提示することは、
人の欲求に答える事、つまり、需要のあることって言う風に考えるんじゃない?」
「ピストルでばんってやっただけで、死んじゃうんだよね」
「当たりどころにもよると思うけど。でも致命的だろうね。ミステリにそんな場面が出てきたの?」
「うん。描写がリアル過ぎて、ちょっと考えちゃった。警察とヤクザさん達の話」
「なんかミステリっぽくないけど、作者はだれ?」
「忘れた。ねぇ、ピストル持ってるのって、日本だったら警察か、やくざさんだよね」
「うん、たぶん。ヤクザさんには、はじきとかチャカって呼ばれてるみたい」
「すごいネーミングセンスだよね。誰が考えたんだろ?普通に拳銃って言うとやっぱり体裁が悪いのかな?」
「だろうね。えっと、うん、やっぱり隠語だって」
「隠語?隠れてなくない?」
考察39 コリオリの力について
「うわっ、高いね。どんどん人がちっさくなってく」
「建物も小さくなってくよ。あとどんどん仕事量が増えてく」
「こわっ!ちょっと、そういうこと言うのやめようよ。急に恐怖心が」
「でも、その代わりにすごく便利じゃん。ここまで発展させてきた人たちに感謝だよね」
「これがないともう生きて行けないって人もいるかな?」
「うーん、多分いるんじゃない?高層ビルの最上階に住んでる人なんか、これがなかったら、もう途中で何回も休憩しないといけないと思うし。
そうなると、需要は逆転するかもね。」
「建設途中なんかでも、エレベーターがなかったら、はかどんないよね」
「間違いなく滞るよね。建設期間なんか、何倍もかかるだろうし。事故も増えるんじゃない?ていうかそもそも高層の限界も出てくるんじゃないかな」
「普段何気に使ってるけどさ、すごい装置だよね。文明の利器?」
「まず、間違いないね。原理的には難しくないけど、機械化するとコンピューター制御はなくてはならないものだろうし。
安全性が高い分、事故が起きると目立ってしまうっていうのが、なんとも言えないけど」
「でもそれは他の設備でも一緒じゃない?人の生命に関わるような事故に繋がってる設備機器ってどうしても注目されちゃうよね」
「うん、それはそうだね。そうして注目することで、より安全性が問われて、より良いものが出来るって構図にもなってるし、全部が悪いわけじゃないか」
「そういえばさ、もうこれで宇宙行けるんでしょ?テレビでやってた」
「これで、ではないけど、そうだね。軌道エレベーターの研究はどんどんされていってるんじゃない?」
「地球を超えて宇宙までケーブルを繋げるんでしょ?」
「うん。静止軌道上の人工衛星と地上を繋げるんだって。そんなこと出来るくらいの科学技術が将来的に期待できるってことなんだろうね。
地上からびよーんってケーブルが伸びてるってすごいシュールな光景だよね」
「飛行機とか、引っかからない?」
「どうだろ?でもコリオリの力があるから、ケーブルの途中の部分は変化しそうだけど」
「コリオリって?」
「コリオリさんってフランスの科学者だけど」
「その人の力ってことか。ちょっと勘違いだよね」
「うーん、やっぱり自分の名前をつけたかったんだろうね。いいじゃん、覚え易くて」
「でもカタカナでしょ?最後のがカタカナなのか漢字なのか迷わない?」
考察38 理想と想像 内側と外側
「それはさ、なんの為にしてるわけ?」
「え?それって、どれ?」
「いや、ご飯半分にするとか。もう1週間くらいになるよね。おばちゃんも不審がってるし」
「いやいや、私だけじゃないでしょ。てか何の為ってそりゃダイエットでしょう」
「必要なの?」
「まぁ、夏だからね。この季節に合わせて、体型を変えないと。私たちは恒温動物だけど、体型は常に一定に保てはしないんだよ」
「痩せ易い季節だからってこと?じゃあ冬になるとどうなるの?」
「それ、聞く必要ある?冬は相対的に熱量が必要なんだよ。そういう風に出来てるの、知らないの?」
「知らないけど。でもまぁ、持論があってしてるんなら、なにもいわないけど。身体壊さないようにね」
「心遣いは感謝するけど、気遣いなんていらないからね。これは戦いなんだよ。分からないだろうなぁ」
「季節ごとに多少変化するのは一般的だけどさ、やりすぎってあんまりよくないと思うけどなぁ」
「毎年、そういう変化を起こしてれば、身体のほうも、お、今年もまたあの季節かってなるでしょ?」
「そんな風に出来てたっけ?でもまぁ、その環境における身体的特徴って理にかなっている場合は多いけどね」
「でしょ?」
「うん。やっぱり本能的なものが大きいのかな。温度的な環境によって体型が変わる事は自明だし、例えば、
災害時のような栄養補給が困難な時には当然、その栄養に合わせた体型になるし、運動を長時間続けなければならないような場合は、
柔軟性に長けた、しなやかなフォルムになるだろうしね」
「カロリー摂取とのバランスが取れない人なんていないもんね。食べてないのに痩せないって、それ絶対どっかで食べてるからだし」
「そういうことだね。逆に、身を置く環境が栄養補給に制限がなく、かつ、長時間の運動を必要としないとなれば、
あとは自分のイメージ通りになるというわけだね」
「イメージ通りってでもそれ、全員じゃないでしょ?」
「いや、全員じゃない?今はほとんどの人が自分の理想通りの生活をしてると思うけど」
「でも、太ったりするのが嫌なのに、そうなっちゃうことってあるじゃん。それはイメージ通じゃないよ」
「いや、イメージ通りだね。もし、そんなことを気にするような人なら、カロリーを摂取する際に必ずイメージしているはずだから。
摂り過ぎるから、理想と離れてしまうんだよ」
「想像と理想が違うって言ってるわけね。なんか太ってるのが悪いみたい」
「悪いかどうか決めるのは自分だよね。他者から見た自分をイメージするのもまた自分だよ」
考察37 アニメーションとアニメーター
「この前テレビでジブリの特集してたね。見た?」
「見たよ。スタッフの数半端ないね。あと製作期間とかすごく長いよね。長編って呼ばれる作品ならあんなものなのかな」
「1年とか2年とか、そんなに時間がかかるものって、他のメディアではそうないよね?」
「うーん、あるにはあるだろうけど、あの2時間くらいの中にそれだけの時間が詰め込まれてるっていうのがさ、長いなって思う」
「そうだね。しかもアニメーターの人たちって、ずっと同じような絵を描かなくちゃならないんだよね?
ちょっとずつ変わってはいってるんだろうけど、あの作業は精神的にキそうな作業だよ、絶対」
「見てる分には、すげー、で終わるけど、いざやるとなると、途方もない作業だろうね。しかもゴールが見えているようで見えていないみたいな風だったし」
「製作途中で、シナリオの変更とか、最悪だよね。月給制なのかな?」
「そりゃ歩合ではないでしょ。監督とかは歩合っていうか総売上によってって感じだとは思うけど」
「アニメーターさんはそういう作業が好きな人じゃないと出来ないよね。普通の人じゃ出来ないよ、すごいよね」
「うん、画面を通して、すごさが伝わってきてた。将来はどうなるかな。やっぱりCGがどんどん出てくるんだろうか」
「昔のアニメーションと比べると、かなり違うもんね。画面が切れずに横にスライドしていくのって、あれ、CGだよね?」
「多分ね。元々、その幅の絵を取り込んで、カメラをスライドしていってるんだと思うよ。CGの技術でかなりスムーズにカメラの視点も切り替わってるし。
昔と変わらず、断続的なのはキャラクタのほうだね。こればっかりはどうしようもないか」
「元の絵をCGで描いてたら断続的ではないんじゃない?」
「うん、そうだね、確かに。つまりネックなのは時間だね。製作期間がどうしてもそれを可能としないのかも。まぁ、フルCGもあるんだろうけど」
「映画とかには多い?」
「多いだろうね。費やせる時間は限られて入るけど、決まってはいないから。でもそうなると、1年とか2年とかもわからないでもないか」
「長いけどね。それくらいかかっても仕方がないって監督さんは思うのかな」
「あとは単純に予算の問題かな」
「ねぇ、アニメってなくなると思う?」
「いや、なくならない。むしろ漫画のほうがなくなるかも」
「それはないんじゃない?理由は?」
「資源」
「資源?紙がなくなるってこと?」
「なくなりはしないだろうけど、生産は減少するかもしれない。原材料次第だけど」
「コストが高くなっちゃうってこと?」
「うん。そうなったら、電子的なものに頼らざるをえないでしょ?小説とか、雑誌なんて、本のままで買う人は少なくなるんじゃないかなぁ」
「あの本っていうメディアが好きなんだけどなぁ」
「そういう人たちの為にも、あり続けはするだろうけどね。より趣味的なものになっていくと思うよ」
「予言?」
「そ、予言」
考察36 創造論と進化論
「宗教に入っている人の考えが、どうもよくわからないんだけど、どうしたらいいかな?」
「それ、俺に聞いてる?」
「ここには君と私しかいないけど」
「うーん、俺も無宗教だからわかんないなぁ。どうして必要なの?」
「友達が、その宗教の子で、なんか礼拝とかあるからって、遊びに来れなくなっちゃってさ。そんなに大事なのかなって」
「宗教自体が大事なんじゃなくて、その律を守る自分っていうのが大事なんじゃない?話の感じからするとたぶんちっさい頃から、
その礼拝を続けてきたんだろうし」
「うーん、それはわかるんだけどさ、一回休むのがそんなにだめな事なのかどうかがわかんなくて。
次行けば良いとかいう問題じゃないってことでしょ?」
「優先順位の問題だよね。その子にとっては礼拝をするってことが絶対順位にいるってことなんだと思うよ。
あぁ、そうか、相対的ではないから、それでわかんなくなってるのか」
「うん、そんなところ。何が彼女をそうさせるんだろ、と思っちゃってさ」
「もし仮に神様がいるとして、その神様が何か願い事をかなえてくれるような存在なら、将来的なことを考えると、
その礼拝の優先順位って案外高くなるよね」
「確かに。信じれば信じるほど高くはなるね。でもそんな奇跡みたいなこと起きるかな?」
「神様だからね。基本は万能者なんじゃない?少なくとも人間よりは高次な存在だろうし、奇跡くらい起こせるでしょ」
「簡単に言うね」
「俺は無宗教だからね」
「でもさ、救いを求める先が神様なら、それの問題が起こる前に解決してくれたらいいのに」
「問題がずっと起きないってことは、神様を否定してるってことだと思うよ?」
「そっか、じゃあ神様は問題が起こるのを待ってるってこと?」
「神様に道徳を持ち込むのはやめてあげたら?人と神様のバランスがそんな風にしてでも、成り立ってるんならいいんじゃない?」
「崇める対象があったほうが楽ってこと?」
「助けてくれる存在はやっぱり頼もしいでしょ」
「神様かぁ」
「創造論か、進化論か。神様がいるってことは創造論なんだろうけど、その神様はどうやって出来たんだろうね?」
考察35 スクリーンとメロンソーダ
「えっと、飲み物どうする?」
「メロンソーダで。Mサイズお願いします」
「君、いっつもそれだね」
「いつもはコーヒーしか飲まないけどね。でもここではコレが一番」
「その基準はなんなの?」
「え?なんだろ、雰囲気かな」
「雰囲気ねぇ、まぁ、わからなくもないけど」
「ここに来る理由の半分以上がこの雰囲気を楽しむためだから」
「ストーリーはメインじゃない?」
「うーん、メインといえばメインだけど。半分以下かな」
「ふーん」
「そういう君もさ、ポップコーン、いつも頼むじゃん」
「私はね、映像見る時はポップコーンって決めてるから」
「それは何か理由があったりする?」
「もちろん。1時間30分とか2時間とか観るとなるとさ、お腹すくじゃん?」
「あぁ、まぁ、確かに」
「こういうのってさ、周りに人がいるからタイミングが結構重要なんだよね。お腹なったら恥ずかしいし、
食べてる音とかも聞こえないようにしないといけないし」
「それどっちに集中してる?」
「もちろんスクリーンだよ。でも、うん、半分くらいか」