考察34 店をだすこと
「君、起業するって言ってたよね?」
「え?うん、そうだけど。それがどうしたの?」
「起業するってことは即社長だよね?」
「まぁ、個人経営だったら、起業した人がその企業の代表になると思うけど」
「うん、それがさ、なんか考えてみたら、すごい格好いいなと思って」
「あぁ、肩書きの話?端から見るとそりゃ「社長」ってだけで格好良く見えると思うけど、その分の責任は半端ないと思うよ?」
「責任ね、それはなんとなく分かってるんだけど、それでもなんか良いなぁって」
「でもそういうの、起業するのに必要な気持ちかもね。最初の一歩動き出す理由はさ、それくらいシンプルでも良いのかも」
「私にも出来るかな?起業」
「出来るよ。というか、しようと思えば誰でも出来る。但し、それなりの武器が必要だよね」
「武器?戦い?」
「まぁ、そう考えても間違いではないよね。武器っていうか商品かな。ほとんどの店が売買取引で収入と支出をして、成り立ってるから。
店の売り出しものを何にするかが重要だよね」
「その店の目玉商品ってことね。確かに、それがないと、お客さんが来ないか」
「うん。物質的なものに限ってはいないけど、まぁ、一番現実的なものとして、オリジナル商品を開発して、売り出すっていうのが一般的じゃない?」
「物質的なものに限っていないって、他になにかある?」
「サービスとか?あと立地とかかな。普通の商品を売り出す店でも、そこのサービスが良かったり、人口密度が高い、というような立地条件が良かったりとか、
他の店とは違うものがあれば、それがその店の武器になるよね」
「あぁ、そういうこと。うん、わかる気がする。じゃあさ、趣味の延長で始めるっていうのはどう思う?」
「うん、良いんじゃない?さっきも言ったけど、始めるきっかけなんてなんでも良いと思う。ただ、その店を出して、何をするか、だよね」
「何をするかって?」
「いや、必ず理由があるでしょ?それに最低限の利益がないと、その店を続けられなくなるから、売り上げは一定以上確保しないといけないし」
「そんなプロみたいなことできるかなぁ」
「お金が関わってくる以上、プロ意識は大事だと思うよ?プロとアマの違いってさ、よく目的を達成するまでの時間の差とかいうけど、この場合、
目的は短期的なものじゃなくて、むしろ永続的なものだから」
「うーん、なんか難しくなってきたなぁ。自分の店を持つっていうのが格好良いんだけどなぁ」
「じゃあ何の為に店を開くのか、を考えた方がいいよね」
「プロかアマかぁ」
「もう一度聞くけど、何の為に、起業したい?」
考察33 プログラミングとドーナツ
「またやってる」
「ん?なんて?」
「ちょっとは進んだの?文字ばっか打って、疲れない?」
「文字ばっかって、そりゃ、そうするものだから、打ってるだけなんだけど。てか組んでる。あとめっちゃ疲れるよ」
「やっぱり。今日はそればっかり?」
「うん、朝から。もちろん、合間に休憩はしてるけどね」
「そうなんだ。でもちょっと休んだら?ドーナツあるけど」
「まじ?じゃあちょっと休憩するわ。ドーナツとか超いいじゃん。チョコのやつある?」
「超とか、嫌いって言ってなかった?ショコラクリームがあるよ」
「うん、この前はそう言ったかも。でも、いいじゃん、気にしない、気にしない。えっと、いくら?」
「じゃあコーヒーおごってよ。買いにいこ」
「おっけい。生協にある、あの甘いの買うか、すごい濃いやつ買うか、どっちにしようかなぁ」
「濃いのにしたら?ドーナツの味なくなるよ?」
「甘いのに甘いのを合わせると味なくなるの?それもそれでちょっと試したいかも」
「変態だね」
「うん、まぁ、否定はしないよ」
「なんか上機嫌?」
「だってドーナツがあるから。ドーナツを開発した人って偉大だよね。あとそれを発展させて、より美味しさを求めようとした人も偉大だ」
「そんなにドーナツ好きなの?」
「好きだよ。作業の合間に食べるものとしては最適だね」
「今度からの差し入れはドーナツに決まりだね」
「うわぁ、また差し入れしてくれるの?それ、作業めっちゃはかどるやつじゃん」
「ちょっと君、普段と違いすぎて、なんか」
「え?あぁ、でも早くとりかかって、続きしないとなぁ」
「はまってるね。新しい言語?」
「うん、新しいっていうか、俺にとっては新しいっていう意味では新しいかな。映像系に強そうな感じ」
「プログラミングってでも難しそう。数学に強くないと、無理だよね?」
「そんなことはないと思うけど。今はプログラミングレス思考って考えまであるくらいだから」
「コンピュータって本当にもう欠かせない存在になってきたよね。人間の頭脳なんてもうとっくに超えてるよね」
「うーん、それはどうなのかな。まぁ、少なくとも、計算処理能力を比較するなら、勝てる人なんて想像できないけど」
「それは賢さとは関係ない?」
「賢さの定義によるけど、俺の中の定義に基づいて言えば、人間のほうが賢い。コンピューターは優秀だけど、
それでも人間を超えることはできないと思うよ」
「ふーん、それはどういう理由で?」
「人間には発想するという概念があるから。例えば、難しい問題をコンピュータにさせる、という発想が浮かぶ分、人間の方が賢いはず。
その発想がコンピュータにはないでしょ?自発的に考えることができるコンピュータはもうそれをコンピュータを呼ばないだろうし」
「発想ね、うん、言いたいことはわかった」
「自由な思考、柔軟な思考、その中でも飛躍する思考は人間にしか持ち得ないものでしょ。このドーナツもそう」
「え?ドーナツ?」
「差し入れって概念、コンピュータにはないでしょ?」
考察32 クラシックとサントラ
「へぇ、見た目すごいシンプルだね」
「いいでしょ」
「えっと、サントラじゃないんだよね?」
「うん、DVDだし。コンサートの様子を録ったものだよ。すごい良いから、今度見てみる?」
「うん。私も聞いたことあるかな?」
「たぶん。CMにも使われてるから、聞いたことはあると思う。一番初期に作られたものが、
今でも使われるってすごくない?しかもジャンルが違うコンテンツにだよ。たしかクルマのCMだったと思うけど」
「うん、すごい。コンサートってことは、どこかで講演されてたってことだよね?それにはいかなかったの?」
「こんなのがあるって知らなかったんだよね。これ買ってから、知ったんだよ。ちょっとショックだわ」
「あー、でもまたあるんじゃない?毎年ってわけじゃないにしても、3年とか、
4年に1回はそういうイベントがあっても需要はあるよね」
「需要はあると思う。うん、そうだね。でもそういうの、逐一チェックしないといけないのがなぁ。簡単にわかったらいいんだけど」
「お知らせアプリみたいなのあると思うけど。そこの会社から、出てるんじゃない?」
「アプリか、確かにありそうだね」
「うん、広告になるようなアプリは多分あるよ。その開発費とかその他のコストを考えても、広告として使わない手はないよね、今の時代は」
「そうだね。今の時代はそういうスピードのある広告が、広告として先を行ってるよね。昔はどうやって広告してたんだろ?
やっぱり地道にチラシとか看板とかなのかな?」
「そうじゃない?あと口コミとか」
「時代を感じるよね。そういえば昔の音楽とか、伝統のあるものって、受け継いでいく必要がある分、消えないよね」
「クラシックのこと?」
「うん。受け継がれるべき良い曲はやっぱり普遍なのかなって」
「そうだと思うよ。むしろ今の音楽は消えて行く一方かも。受け継がれるべき曲って、すぐ思いつかないし」
「うーん、そうかなぁ」
「なにかある?」
「アシタカセッキとか後世に受け継がれないかな」
「セッキ?それ打楽器?」
考察31 素粒子について
「それなに?模型?」
「それ、どうするの?」
「なんか今度講義で使うからって教授が。とりあえず研究室に持っていっておいてって」
「ふーん。さっきスルーしたけど、素粒子って何?名前は聞いたことあるけど」
「うーん、簡単に言うと、世界を構成する要素かな。全部で17個あるよ」
「世界を構成ってまたすごい規模の話だね」
「素粒子ってでも本当に、その役割があるからね」
「そんなのみんな分かるの?てか君、建築だよね?」
「俺が取ってる講義ではないよ。知り合いの教授に言われたら、断れなくて。研究室が近いから、持って行ってあげるだけ」
「知り合いの教授って、理系なの?」
「うん。ていうか建築も一応理系なんだけど」
「え?そうなの?たしかに文系ではないような気がするけど」
「文系じゃなくて、さらに理系じゃないとしたら、あとは何系があるわけ?」
「それは、ちょっと、そうだね。文系じゃなかったら、理系だね」
「まぁ、その分け方はどうかと思うけど、とりあえず、建築は理系じゃないと無理だよ。わっと、あぶない。これ、先のほう取れかかってる?」
「うん、ちょっと待って。はい、これでオッケー」
「ありがと」
「これさ、これがそれぞれの大きさ?全部一緒なんだね」
「いや、違うと思う。多分わかり易いように標準的な大きさで揃えてるんじゃないかな。
でもたしか、素粒子って大きさとか、未だにわかってないとか言ってたような」
「わかってないのに、なんでこの大きさになってるの?」
「それは、プランク長スケールで表す事になってる」
「何それ?」
「全然わからない。でもこれに書いてあるのは、複数鵜の点粒子が運動する有限の領域が、有限のハドロン等の大きさを持つ粒子を構成する事によるって書いてある。なにこれ?どういう意味だと思う?」
「私に聞かないでよ」
「ヒッグス粒子、フェルミオン、ボソン、クォーク、レプトン・・・・・・」
「なんか音楽に出てきそうな名前」
「どのあたりが?」
「バソンとかプーランクとか」
「じゃあヒッグスは」
「それはレゲエの父でしょ」
「でしょ?・・・もしかして音楽通?」
考察30 モラトリアムへようこそ
「就活してるとさ」
「うん?」
「よく出てくるじゃん?社会性とはなんだと思いますか、また、あなたがその役割を担うとして、どういう働きをしたいですか、とか」
「え?そうなの?まだ2回生だからわかんないけど」
「あ、そうか、うん、まぁ、出てくるんだよ。社会性とは、なんて、聞いてどうするんだよって思うんだよなぁ。あれなんなんだろ?」
「え?でも企業側からしたら、自分のところに入って、どういう風なことをあなたはしてくれますかってことでしょ?
普通じゃない?」
「だったら、そう言えばいいのにって思うわけ。いま、君がそう言ったことに対しては、きちんと答えようと思うけど、
社会性とか言って、自分のところの企業とは違って、もっと広い意味でどう思っているのか、なんて、聞く意味ある?」
「あー、そういうこと。企業って格好つけたがるところがあるんだね」
「そうなんだよ、格好をつけたがるんだよ。そこが嫌い。自分のところは置いておいて、世間一般的に、
どういう働きなんて聞いてどうするんだよ」
「あー、それさっきも言ってたよー」
「自分のところではって聞くのってそんなにためらうことか?普通に聞けよとか思うわけ」
「そんなところ、行くのやめれば?」
「もちろんです。そういう話しかできないところなんて、興味ないね」
「そこだけ聞くと、君もきちんとした考えを持っている風で、格好がついてるね。でも、後々後悔しないように」
「わかってる。でも、プロ意識とか、まだなんかしっくりこないんだよなぁ」
「まだいいんじゃない?完全に大人になってないかもしれないけど、子供でもないんだし」
「でも世間ではこういう風に足踏みしてる状態をさ、ピーターパンシンドロームって言われるんだよね」
「ピーターパンシンドロームかぁ。私はまだその状態でいいかな。子供よりも大人の期間のほうが長いんだし、
少しくらい子供の期間が延びたって、良いと思うんだぁ」
「俺も去年はそう思ってたんだけどね。もうなんか自らっていうより、別の力で引き抜かれてる感じなんだよなぁ。
嫌な感じだぁ」
「そんなに机に突っ伏してたら、ますますだめだーってなっちゃうよ?」
「こんなんでちゃんとした大人になれるのかな・・・・・・今の俺、ピーターじゃないほうのやつのほうが、しっくりくるかも」
「はいじゃあこれ」
「なにこれ?」
「読んで字のごとく。モラトリアムへようこそ」
考察29 賞について
「この前さ、コンペの話してたでしょ?あれさ、選ばれると、賞金ってもらえるんだよね?」
「まぁ、提案部門とかだと、もらえるだろうね。優秀賞とか佳作とかで額は変わってくると思うけど。なんで?」
「それさ、つまりコンペティションが、〇〇賞っていうことになるわけ?」
「あぁ、賞金だから、それは何かの賞の報奨金じゃないかってこと?うーん、どうなんだろ?
そもそも、コンペと賞の違いってなんだろうね。ちょっとわかんないや」
「依頼者側から見たら、単にその企業なり、企画の一つだったりするんだろうから、
それに〇〇賞なんて名前をつけるのも、もしかしたら恥ずかしいかもしれないけど、それでも賞だよね。
ちょっと気持ち悪いけど」
「賞とか聞くと、小説の投稿とか想像するなぁ。あれはむしろ〇〇賞っていう名前をつけないと、気持ち悪いよね。
その賞の為に、作品を送ってくださいっていう企業側からの要望がつまってて、賞金額なんかも、予算会議とかで決めるのかもしれないね」
「賞とコンペをわけてるのってじゃあなに?」
「うーん、規模かな?それとも社会的価値?」
「社会的価値って、あー、じゃあメディアが違うってこと?」
「そのカテゴリが、一般向けかそうじゃないかで分けれるんじゃない?建築の応募なんて、どう見ても一般的じゃないでしょ?」
「小説とか漫画とかを投稿するほうが一般的って君は捉えてるわけ?」
「少なくとも、そこに応募資格が必要なわけではないでしょ?詳しくないから、おそらくだけど、年齢も制限がないだろうし、
国籍も問われないんじゃない?建築の場合は、応募資格があるはず」
「つまり建築に限らず、応募するのに、何かしらの資格が必要なものはコンペって呼ばれるんじゃないかってこと?」
「端的に導くとそう捉えられるよね。まぁ、違ってても、何の影響も与えないから」
「応募資格が必要ないってつまりその間口がすっごく広いってことだよね。小説家とか漫画家ってその中から選ばれるのかぁ、すごいね」
「うん。それの審査員とかちょっとやってみたいよね」
「いや、私はいいや。疲れそうだし、そもそも、才能を見る目がないし。それも才能が必要だと思わない?」
「たしかにね。作品を何作も投稿しても、見込まれなければ、プロにはなれないし、もちろん、賞もない」
「しょうがないってそういう意味?」
「君もあきらめた方がいいよね」
考察28 資格について
「あ、それ、1級の?」
「うん、そう。やり始めたのは昨日からだけど」
「へぇ、どこのやつ?」
「えっと、どこのだっけ?〇〇資格って書いてあるけど」
「あぁ、そこのか。本屋の参考書コーナー行ったら必ずおいてあるよね」
「まぁ、ジャンルによると思うけど。でも俺が買った本屋では充実してたな、確かに」
「私はまた別の勉強してるから、そこの、あまり買わないんだけど、それでも目につくよね」
「それだけ大規模に展開させてるんだろうね。全国に支社っていうか学校があるんだっけ?」
「うん、多分。関西のほうにもあったと思う。ていうか関西のほうが本社なのかな。本社っていうか本校?」
「あぁ、本校のほうだろうね。そうか、毎年出版してるのなら、去年の分までの積み立てで今年の分を制作してるのか」
「どういうこと?」
「いや、こういうのってさ、毎年出すなら、出す前の年の売り上げがそのまま出す年の制作予算に含める事が出来るでしょ?
だから、出版がうまくいけば、翌年のぶんとか、もっといえば、一番最初に出版したときの制作分まで取り返せるし、
もっとうまくいけば、それが資金源というか予算源にもなりえるなって思って」
「ふーん、言われてみれば、そういう風にうまくいけば、出版する意味ってあるよね。しかも大規模に展開出来れば、
それだけで売れる見込みっていうの?それがわかるもんね。そっか、だから本屋にはいつもあって、皆も使ってるんだ」
「皆が使ってるから、本屋に置かれてるというほうが正解だと思うけど」
「君、そういうの疲れない?」
「そういうのって?」
「あ、いや、違うな。こういうのが疲れるんだった」
「君、疲れてるの?」
「もういいって。資格の話っていうだけで疲れるのは目に見えてたか」
「シカクって検索してたとき思ったんだけどさ」
「何?」
「それだけ見てると、なんかミステリっぽいよね」
「やっぱり君も疲れてる?」
「いやいや、だってさ、四角で視覚で死角で刺客でしょ?なんかトリックとか出てきそうな感じしない?」
「言いたくないけど・・・・・・失格」